老いを美にする方法
第二の青春を躯歌するためには、いくつかの条件が必要です。
まず第一に、「健康」でなければなりません。成人病になったり、頭がボケてしまったり、寝たきりになっては、せっかく迎えた第二の青春は苦しみの時になってしまいます。
第二に、「老醜」の観念を捨てなければなりません。年をとることが醜くなることだと思ったら、気持ちが萎縮してきます。「もう年だから」「おばあさんだから」という考え方になって、どんどん老いてしまいます。
第三は、「老美」を確信することです。年をとることで失うものは若さだけで、他の魅力の要素は年とともに積み重ねられていく。それを積み重ねていけば、若いときよりも美しくなれると信じることです。
女が美しく年を重ねる秘訣は、若さ以外の要素を積み重ねていくことであり、実際に年を重ねるごとに美しくなっていく女性は、若さは失っても、他のものをどんどん積み重ねていっているから、以前にもまして輝いて見えるのです。
では若さ以外に女が美しく年を重ねる条件とはどんなものでしょうか。私は次の六つがそれだと思います。
①心身の健康
②心のあたたかさ
③姿の美しさ
④知性と教養⑤身だしなみ
⑥優雅な品性
本当に美しい人はいつまでも美しいもの。でも若さを土台にした美しさは決して長く続くはずがないのです。それなのにエリザベス・テーラーやジーナ・ロロブリジーダなど外国の女優さんは六十代、七十代になっても、とても若々しい美しさに輝いています。
彼女たちを輝かせているのは何なのでしょうか。それは「若さに頼らない女の魅力」が輝いているのです。どんな女性も年を加えていけば、若さは失われていきます。老化制御はその失われていく若さを、少しでも遅らせる技術です。
この技術がむかしは発達していなかったので、成長するまでの女性は美しいけれど、成熟点に達した瞬間から、どんどん急な坂を下るように輝きを失っていくしかありませんでした。いまは科学の力でそれを補うことができるようになったのです。
人間の寿命はもともと百二十歳はあります。そこまで達する人が稀なのは、人間の暮しぶりや病気の存在がそれを阻んだからです。伝染病を防ぐ知恵もまだなかったむかしが早死だったのは当然でした。いま人間の英知が科学を発達させて、私たちは本来あるべき寿命を手に入れようとしているわけです。
でも努力なしにそれを手に入れることはできません。第一にしなければならないのは、「老化を遅せる努力」です。とくに更年期年齢になったら、それは不可欠といっていいでしょう。人生百二十年で考えれば、更年期年齢の四十代はまだ人生の半分にも達していません。しかし若さはほうっておけばどんどん失われていく。努力すれば老化速度はゆるやかになり、ちゃんと百二十年のすべてに現役でいられるのです。
しかし、それだけでは失われていく若さというマイナスを、少し食い止めただけですから、全体としてもマイナス感情。加齢とともに女の魅力を増やしていくことにはなりません。それを増やしていくのが前記の六つの条件です。
心身の健康、心のあたたかさ、姿の美しさ、知性と教養、身だしなみ、優雅さと品性。こういった種類の女の魅力は年齢とは関係ありません。だからいくらでも自分にプラスしていくことができます。成熟した女の魅力を形作っているのは、むしろこうした要素ではないでしようか。
pp.50-53.