人生四期説
第二の青春を六十歳からとして、百二十歳までの人生計画をたてるとすると、時間は六十年あります。Ⅱ数に直すと約二万日になります。それはいままで生きてきた日数と同じ。つまり百二十年人生では、前半の六十年で社会的な義務を果たし、後半の六十年を第二の青春として思いきり楽しむのです。
もし、いまあなたが四十歳だとしたら、まだ二十年は社会的な義務をかかえて生きなければならないでしょう。しかし同時に六十歳からの青春の準備もしなければなりません。もしあなたが五十歳代だとしても同じです。
三十歳代なら準備時間はたっぷりあります。六十歳代、七十歳代はもう第二の青春に突入していますが、終点をどこにおくかでドラマづくりは違ってくるでしょう。どの世代の人も八十年は変更しなければなりません。
実際に人生百二十年の計画をたてるとき、どのようにたてればいいでしょうか。私はいまの社会の情勢、科学の発達を考えに入れて、百二十歳までの人生設計を次のように考えています。
青年期(○〜二十九歳)
学びの時代.誕生してから肉体的、精神的に完成するまでの時期。学校へ行き、体を鍛えて一人前になる。
成年期(三十〜五十九歳)
社会参加の時代.社会へ出て働き、結婚して子供を育て人生を楽しむ技術を身につける。
壮年期(六十〜百歳)
第二の青春前期.社会的役割を終え、自分自身が生を満喫する時期。自分の意志で社会参加を続けることは可能。
熟年期(百歳以上)
第二の青春後期.悠々自適の時期であると同時に人生の意味を考え、真の自由と自己実現を目指す時期。
これくらい長期で考える必要があります。そして計画をたて準備をするのです。旅行へ行くとき、どんなに面倒くさがり屋の人でも、ある程度の準備と計画はたてます。そうしないと楽しめないからです。人生も同じで、行き当たりばったりでは、些細なことが障害になって、せっかく楽しめるものをつまらなくしてしまいます。
そういうことのないよう目標をたて計画をつくり、必要な準備をしてください。とくに第二の青春は、まるで修学旅行の準備のように、ワクワクと胸がおどるのではないでしょうか。
まず最初に決めておく必要があるのは目標です。人間は目標がないと目的地をもたない船のようなもので、人生がむなしくなります。それではせっかくの第二の青春が無意味なもの
になってしまいます。
「別に目標がなくても毎日毎日を精一杯生きて行けばいいんじゃない」
なるほど言葉の上ではそうかも知れませんが、長い人生それでは退屈してしまいます。退屈くらい恐ろしいことはありません。「さまよえるオランダ人」という北欧伝説では、誓いを破った船長が七つの海を永遠にさまようという罰を受けるのです。命はとられない・船も沈没しない。しかし目的地もなくえんえんと船を操り続けなければならない。これほどの苦しみはないのです。
目標は生きがいを感じられるものなら何でもいいのです。最近よくいわれる言葉に「生涯現役」というのがあります。生きているかぎりは、ボケたり人の世話になったりせずに、壮年期の元気さを維持し続けることです。
これも一つの目標になります。また何か具体的な計画でもいい。「自伝を完成させる」などというのもよいのではないでしょうか。私は生涯現役と似ていますが、常日頃から「八十五歳現役」ということをいっています。
「生涯」だと漠然としてしまいますが「八十五歳」なら具体的な目標になります。八十五歳で壮年期の元気さを保つ。立派な目標ではないでしょうか。ある人にそのことを話したら「人生百二十歳を唱える人がなぜ八十五歳で区切るの。そこから先はどうすればいい」ときかれました。
簡単なことです。そこまで到達することがわかった時点で十歳ずつ目標をあげていく。八十五のつぎは九十五。九十五のつぎは百五。それをくりかえして十年先の計両をたてればいいのです。
pp.63-66.