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前編は終わり、後編が始まる
過去に自分に不本意な人生を送ってきた人は幸いです。これから自分の望ましいと思う人生をドラマにし、それを演じることができるからです。人を感動させる物語はストーリーに起伏があります。ヒロインは苦しい悲しい運命に出会い、苦労に苦労を重ねた末に幸せを手に入れる。苦労が大きいほど幸せも大きい。
過去に苦労した人はそれだけ感動的なドラマをつくることができ、いま苦労している人はもっともっと感動的なドラマがつくれることになります。「あとよしの効用」というのがあります。人と話をするとき、最初にホメてあとからケナすのはだめで、順序を逆にせよというのです。
①「あなたは美人だけど、ちょっと太り過ぎよ」
②「あなた、ちょっと太り過ぎだけど、あいかわらず美しいわね」
この二つの言葉は同じことをいってるわけですが、順序がちがうだけで相手に与える印象には天地の差が出てきます。①はムッとするでしょうが、②は一言一言。コーヒーの一杯くらい御馳走してくれるでしょう。人生も同じです。かりに九十年の人生で八十九年間苦労の連続でも、最後の一年、あるいは三日でも素晴らしく充実した楽しい日を過ごせれば「ああ、生きていてよかった」と思えるはず。そういう人生を念頭においてドラマをつくってみましょう。
いまや世界でトップクラスの服飾デザイナーの森英恵さんだって、服飾の世界に踏み込んだのは結婚して主婦業を開始してからです。何か職を身につけたいと服飾学院に通いはじめたのがきっかけ。そのときご主人にいったのは「家事だけは絶対に手抜きしません」ということだったといいます。
このとき森さんは、ご主人とは別の自分自身の人生ドラマのシナリオを書きはじめたのですね。結婚して子供を生んで専業主婦で過ごすのも立派な人生です。でもそれならそれでやっばり目標は必要なのです。何も考えないでただ夫に従属して暮らすのではなく、「いつまでも若々しくいよう」とか「八十五歳現役」とか自分自身の目標がなければ自分の人生とはいえません。
長い間、日本の女性は男に従属する生き方を強いられていました。だから女の生きがいといえば「夫や子供の出世を陰から見守る」くらいしかなかったんです。良妻賢母。でも夫に先立たれたらどうするのですか。子供ができなかったら。あるいは子供が一人前になって独立してしまったら……。もう生きがいはなくなってしまうのですか。それでは生きていてもつまりません。
むかしの女性が悲しかったのは、そういう人生を送る人が多かったからです。ところがいまはどうでしょう。女性は男性と同じ地位を与えられ、何をしても後ろ指をさされたりしない。むしろ自分の人生を切り開いていく女性には男性も喝采を送る時代です。
あなたも森英恵さんのように、他人に従属するのでなく、自分だけの人生ドラマをつくってみてはいかがですか。いままで生きてきた人生は前編です。後編をこれから腕によりをかけて考える。こんな楽しいことはないはずです。
pp.70-72.